当院のがん治療
treatment

膀胱がん①

膀胱がん 80代 女性

免疫療法と放射線短期照射の併用で巨大腹膜播種、肺転移が消失。

診断名

膀胱がん・術後再発
転移部位:肺・腹膜・全身リンパ節・骨(肩甲骨)

当院の治療までの経緯

2011年手術。翌年再発し再手術。その後、再々発が見つかった。
肺転移に対して放射線治療のみ単独で行ったが、効果は認められなかった。
抗がん剤治療により慢性腎不全を併発していたため、これ以上の治療は難しい、と主治医から言われた後、当院を受診した。

治療内容と経過

治療内容

がん特異的な細胞傷害性T細胞の誘導

2018年12月から当院の多段階免疫調整によるがん治療を開始することになり、樹状細胞投与のためのアフェレーシスと短期放射線照射のスケジュールを組んだ。がん微小環境における免疫抑制因子の除去、および樹状細胞によるがん抗原の認識を高めるため、放射線を腫瘍部位に短期間照射(クリニックC4にて)した。放射線照射の1週間後に、膀胱・リンパ節・右肩甲骨の転移腫瘍部位に樹状細胞を局所注射した。

免疫チェックポイント阻害剤の投与

がん特異的な細胞傷害性T細胞の免疫疲弊をブロックするため、2週間に1回の低用量ニボルマブ(0.3mg/kg)を6回にわたり投与した。

経過

患者さんには慢性腎不全による貧血があり、輸液に加え、アルブミン、輸血などを施行した。全身状態の改善とともに、治療に対する反応も高まり、がんの症状も軽減していった。

MRI画像
治療前

骨盤内に7cm径の著明な異常集積を認める転移巣を認めた。

治療後

治療8ヶ月後には骨盤内の異常集積病変はほぼ消失していることを確認した。

治療費

本症例の場合は以下のような費用がかかっております。
・細胞作成費用 260万円
・点滴費用 150万円程
・その他手技料 20万円程
・放射線療法 他院での治療による費用
・画像検査 他院での検査による費用
※ 発生する費用は患者さんの病状や癌腫などに応じて変わりますので、病状が把握できる資料をお持ちの上、ご相談ください。

主なリスク・副作用

樹状細胞等の免疫細胞の投与には次のような副作用が発生することがあります。
・細胞の投与から2日後ぐらいまで、38度以上の発熱が認められることがあります。

ニボルマブ等の免疫チェックポイント阻害剤の投与には次のような副作用が発生することがあります。
・「発熱」「悪寒」「かゆみ」「発疹」「呼吸困難」
・また稀に重篤な有害事象として「間質性肺炎」等の免疫関連有害事象(irAE)を引き起こすことがあり、その場合は入院加療が必要なことがあります。

考察

進行がんの患者さんには、もともと抱えている成人病や、合併症などで治療が行き詰まってしまう方が多くいます。患者さんの様々な病気に対して積極的にアプローチし、全身状態を改善させることをしないで、効果的ながん免疫療法は行えません。
貧血状態が続くと、全身の栄養状態も悪化し、免疫の「力」が発揮されません。この患者さんは慢性腎不全による貧血等の問題があり、当院の治療初期にはほぼ寝たきりの状態でしたが、合併症に対する全身管理を積極的にしたことで、劇的に症状が改善しました。