がんと免疫のお話し
Cancer and Immunity

制御性T細胞(Treg)

・ 制御性T細胞は、FOXP3という転写因子を活性化することでCTLA-4という分子とIL-2受容体を常に細胞表面にたくさん出しています。CTLA-4は免疫を抑制する分子で、ヘルパーTリンパ球やキラーTリンパ球が樹状細胞から刺激されるのを邪魔します。したがって、このCTLA-4に蓋をしてしまえば免疫反応を抑制しようとする邪魔者がいなくなるので、がん治療にとっては好都合です。世界初の免疫チェックポイント抗体であるヤーボイ(Yervoy)は、このCTLA-4を阻害する薬剤として開発されたものです。
 制御性T細胞はCD4陽性のT細胞であり、競合する相手はCD4陽性のナイーブヘルパーT細胞とCD8陽性のナイーブキラーT細胞です。制御性T細胞はCD4陽性T細胞全体のおよそ10%程度を占めています。樹状細胞の表面には自己反応性の制御性T細胞が絶えずはりつき、樹状細胞の活性化と抑制のバランスをコントロールしています。たとえば樹状細胞が病原体を少々貪食したとすると、表面に病原体由来の抗原ペプチドが現れますが、その程度では制御性T細胞による抑制がまさり、ナイーブT細胞の活性化にまでにまでは結び付きません。免疫細胞が暴走すると自己免疫疾患になってしまいます。免疫細胞の暴走を抑制するために制御性T細胞がいます。がん免疫において、がん細胞が制御性T細胞の働きを悪用し、がん細胞を守るような働きをさせる可能性が明らかとなっています。がん細胞を攻撃するCTLを作り出しても、制御性T細胞などによって、がん免疫が抑制されてはがんに勝てません。そのために、がん組織において制御性T細胞の働きを抑え、CTLが十分にがん細胞を攻撃できる環境を作り出すことが重要です。
 当院のがん複合免疫療法では、樹状細胞局所療法によって樹状細胞をがん組織に打ち込み、CTL(細胞障害性T細胞)を誘導し、がんを滅することを目的としていますが、がんは手強いため、CTLの働きを様々な手段で妨害します。制御性T細胞がCTLの働きを抑制することもあります。当院のがん複合免疫療法では制御性T細胞の働きや、他のCTL抑制因子について、免疫調節薬や免疫チェックポイント阻害剤の使用によって解除を試みています。

・ 樹状細胞の表面には自己反応性の制御性T細胞が絶えず張り付き、樹状細胞の活性化と抑制のバランスをコントロールしている。たとえば樹状細胞が病原体を少々かじったとすると、表面に病原体由来の抗原ペプチドが現れ出すが、その程度では制御性T細胞による抑制が勝り、ナイーブT細胞の活性化にまでには結びつかない。そのうち病原体が大繁殖して、樹状細胞がこれを食べて抗原ペプチドを大々的に提示し始めると、表面の自己ペプチドは減り、制御性T細胞が外れていく。そうなると樹状細胞も抑制が取れて、活性化に向かい、ナイーブT細胞の活性化に至る。こうして自己反応性のT細胞の暴走と、免疫応答の過剰な活性化をバランスよく抑えているのが制御性T細胞といえる。

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