樹状細胞局所療法・樹状細胞療法
・ 血液中の単球をアフェレーシスによって集めて体外で培養し、サイトカイン等で刺激することによって樹状細胞へ成熟させ、患者へ注射にて投与します。注射された樹状細胞がリンパ球を強力に教育し、目的のがん細胞を攻撃できるようにします。腋窩や鼠経の皮内に樹状細胞を投与する場合もありますが、当院ではがんの原発巣や転移巣にCTやエコーガイド下の元、直接樹状細胞を投与します。樹状細胞を直接がんに打ち込んだ方が、CTL(細胞障害性T細胞)の効率的な誘導が可能になると考えています。樹状細胞は、免疫細胞に分類され、リンパ球にがんの目印を教えてがんを攻撃させる、いわゆる抗腫瘍免疫における「司令官」です。しかしながら、がん細胞が増えすぎると、樹状細胞の働きが追いつかなくなることもあり、その結果、がん細胞が増殖してしまいます。 その問題を解決するため、樹状細胞を体外で培養し、増やしてから患者さんの体内に戻す樹状細胞療法が開発されました。当院では特に、樹状細胞を腫瘍局所にCTやエコーガイド下で投与する、「樹状細胞局所療法」を行っています。
・ 自分のタンパク質の一部(ペプチド断片)を目印として攻撃が起これば、我々にとって不都合なこと(自己免疫病などの疾病)がたくさん起こるため、自分を攻撃するような免疫反応が起こらないような仕組みが備わっていますが、実は必ずしもそうでない場合があり、それを利用したのががんワクチン療法です。
がんワクチン療法は、がん細胞で特異的に作られているタンパク質を利用して、患者さん自身の持つ免疫力の内、がん細胞だけを攻撃する免疫を高める治療法として1990年代から試行錯誤が繰り返されてきました。丸山ワクチン、蓮見ワクチン、あるいはNK細胞などの免疫療法と混同される場合がありますが、これらの治療法は無差別に免疫を高める非特異的免疫療法であるのに対して、樹状細胞療法は、特定の免疫力だけを高める特異的免疫療法として区別されます。
特に我々が提供している「多段階免疫調整によるがん治療」は、がん細胞を攻撃目標とする細胞障害性リンパ球(CTL)という種類のリンパ球を増やすことを目指しています。リンパ球といっても色々なウィルスや外敵に対応できるように、体の中には膨大な種類のものが存在しますが、このうち、主にがん細胞だけに反応するCTLを増やすことを目的として、我々は樹状細胞を利用しています。