がんと免疫のお話し
Cancer and Immunity

食道がん

 食道がんは、同じ消化器系でも胃がんや大腸がんに比べると早くからリンパ節転移や肺転移が起こりやすい悪性度の高いがんで、手術で完治させることがなかなか難しいのが現実です。がんの成長速度も速く、平均的に胃がんの2倍、大腸がんの約4倍です。また、食道は、頸部(首)、胸部、腹部にまたがる臓器なので、手術時はこの3か所を切り取ることが必要になります。特に胸部の切開は、ろっ骨などの骨も切って行うため、体に負担がかかり、手術時に肺炎などの合併症が起こるリスクが高くなります。しかも、食道がんは、高齢の患者さんが多いことから、しばしば合併症が問題となります。
 早期発見できれば内視鏡下手術で治るものも少なくありませんが、ある程度進行した食道がんでは、手術の代わりに放射線治療と抗がん剤の併用療法が標準的な治療となっています。

■ 食道がんの治療 [1]
 手術と、放射線と抗がん剤の併用療法との間に延命期間の差がないことが明らかとなり、合併症の少ない後者が標準治療となりました。しかしこれは、手術ではなかなか治癒が難しいことを意味しています。そして、残念ながら、放射線と抗がん剤の併用療法で治るようになったわけではありません。
 放射線と抗がん剤の併用療法が、手術に代わって標準的な治療となったのには、効果が差が無いということ以外にも理由があります。たとえば、手術でがんを切除しきれない場合、術後の回復を待っている間、取り残したがんがどんどん増殖してしまいます。また、手術後は抗がん剤治療に対する抵抗力も弱いため、標準治療を行うことが難しいことも少なくありません。ならば初めから、食道がんそのものや周囲のリンパ節転移には放射線による局所療法、その他の転移に対しては抗がん剤による全身療法を行った方が戦略的に正しいということになります。食道がんの抗がん剤治療では、5-FUとシスプラチンの2剤併用、最近ではタキソテールが用いられます。

■ 食道がんの治療 [2]
 食道に存在するがんで、日本人に最も多いのは、食道扁平上皮がんと言われるタイプのがんで、食道がんの約90%を占めます。これに対して、欧米では食道腺がんと呼ばれるタイプが最も多く、80~90%程度になります。したがって、日本における食道がんの治療という場合、この食道扁平上皮がんが対象として述べられているケースがほとんどです。
 進行食道がんは、依然として難治性がんの一つであり、膵臓がん、肝臓がんと共に治りにくいがんとして有名です。しかしながら、食道がんといえども早期に発見されれば、現在では内視鏡的に切除する方法が一般的で、その成績も良好でかつ食道を温存することも可能です。すなわち、早期発見、早期治療が望まれるのは、他のがんと同様に明白です。 一方、進行食道がんは手術、放射線治療、抗がん剤の3者を組み合わせて行う集学的治療が臨床現場で行われている標準的な治療です。また、手術は、胸部、腹部、頸部の3か所を操作する大きな手術が必要であり、患者さんの負担は極めて大きなものです。しかしながら、集学的な治療により生存率の向上が認められるものの、依然としてその成績は不良であり、食道がん切除症例の3年生存率は約45%程度というのが現状です。
 したがって、外科的切除、放射線治療、抗がん剤療法に併用すべき新規治療法の開発が必要であり、がん免疫療法も期待される治療法の一つであります。当院にも進行食道がんの患者さんが受診されており、当院で多段階免疫調整によるがん治療による治療を勧めています。

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