がんと免疫のお話し
Cancer and Immunity

がんの免疫逃避

 がん免疫療法の効果が限定的である場合、「がんの免疫逃避」に注目し、これを克服することが重要であるといえます。「がんの免疫逃避」とは「がんの逃げかくれを許してしまった状態」といえます。免疫逃避のメカニズムの主なものとしては、①腫瘍抗原の発現低下、②HLAクラスIの発現低下、③腫瘍による免疫抑制サイトカインの産生、免疫制御細胞の存在、があります。
① 腫瘍抗原の発現低下は、がん細胞では遺伝子変異が起こりやすく腫瘍抗原の発現も不安定であることが理由としてあげられます。腫瘍抗原が変異するとせっかく特異的なCTLが誘導できても、がん細胞がCTLに認識されません。
② HLAクラスIの発現低下も遺伝子変異などが影響していると考えられますが、ある報告ではHLAクラスIは膵臓の原発巣で94%発現している一方で、肝転移巣では57%に低下するとされています。HLAクラスIの発現低下がある場合にも、CTLはがん細胞を認識できなくなります。
③ 腫瘍やその周囲の組織から産生される免疫に抑制的に作用するサイトカインや免疫制御性細胞は、CTLによるがん細胞の傷害を邪魔しています。

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