がんと免疫のお話し
Cancer and Immunity

放射線治療の種類

 「放射線」とは、空間や物質中を通過するときに、まわりの原子や分子に作用してエネルギーを伝え、電離させる能力のあるものを総称して指すのが一般的です。
・ 外部照射と内部照射の2種類がある
 放射線治療には、大きく分けて「外部照射」と「内部照射」の2種類があります。外部照射と内部照射は、対象とする疾患に応じて使い分けられ、がん治療では外部照射が主に行われています。外部照射と内部照射を組み合わせて、放射線治療が行われることもあります。外部照射では、リニアックなどの放射線照射装置を用いて、体の外側から放射線をがん病巣に照射します。内部照射では、放射線を出す小線源をがん病巣付近に入れて、体の内側から放射線を病巣周辺に照射します。内部照射で使用される小線源には、カプセルなど密封された放射性物質を用いる密封小線源と、密封されていない放射性物質を用いる非密封小線源があります。

【外部照射】
 外部照射で使用される装置および照射法には、いくつかの種類があります。
- 一般的な放射線治療
 高エネルギーX線を発生させる治療では、主にリニアックが使用されています。最近のリニアックには、正確にがんの位置を把握する装置やマルチリーフコリメータなどが備わっています。マルチリーフコリメータは、照射範囲を調整できる装置です。こうした装置があることで、より高い精度で多方向から高エネルギーX線をがん病巣に照射できます。病巣の位置の把握には、CTやX線画像が使われます。
- 三次元原体照射(3D-CRT)
3D-CRTでは、コンピューターとCT、MRI、PETなどの画像を使って、照射したいがん病巣とその周囲の正常組織との位置関係を立体的に再現したデータを使用します。そのうえで、正確な照射を行うために治療装置を回転させながら、病巣の形や大きさに合わせて位置を調整します。
照射位置や放射線量を管理しながら照射するため、正常組織の放射線被ばくを可能な限り抑えながら、病巣部分に必要な線量を照射できます。
- 強度変調放射線治療(IMRT)
 IMRTは、3D-CRTをさらに進化させた照射法です。放射線治療計画装置(専用コンピュータ)を使って一人ひとりに合わせた照射を算出。照射範囲の形状を自由に変化させることができるマルチリーフコリメータを用いることによって、照射したい病巣部の線量を強く、照射したくない正常組織の部分の線量を弱くすることができるようになりました。
- 定位放射線治療(SRT)
SRTとは、比較的小さな病巣に対していくつもの方向から放射線を集中させる治療法です。通常の放射線治療と比較して、病巣だけに放射線を集中させることができるため、治療効果を高めることができます。病巣にだけ照射されるようにしてあるため、周りや他の組織へ当たる放射線量が少なくて済むのがメリット。SRTの治療は数日かかるのが一般的ですが、一度の治療で済む場合は、SRTではなく「定位手術的照射(SRS)」と呼んで区別されます
- 粒子線治療(陽子線治療・重粒子線治療)
 粒子線治療とは、陽子や重粒子(炭素イオンなど)の粒子を、加速装置で加速させて病巣に照射する放射線治療法の総称。現在実施されている粒子線治療は、陽子線治療と重粒子線治療(炭素線治療)です。陽子線を使った治療は、いちばん軽い原子である水素原子の陽子を用いて行われます。陽子を光の速さの60%まで加速させ、がん病巣に照射する治療法です。陽子線治療の特徴は、体内の深層部で効力がピークに達する点。これを「ブラッグピーク」と言います。X線やガンマ線は、深層部へ向かうにつれて効力が弱まる性質があるため、陽子線治療は体内の深くにあるがんに対して有効な治療法と言われています。重粒子線治療は、水素よりも重い粒子を使用している治療法です。主に炭素原子が使われています。重粒子線治療では、がん病巣に対して高速の70%まで加速した炭素イオンを照射し、ダメージを与えます。

【内部照射】
内部照射で使用される小線源には、密封されていない放射性物質を用いる非密封小線源と密封された放射性物質を用いる密封小線源があります。外部照射と比較した内部照射の特徴として、がん病巣のすぐ近くから放射線を照射できること、呼吸や生理的な運動などよって病巣の位置が変わる影響を受けにくいことがあげられます。
- 非密封小線源治療
非密封小線源治療で用いられる放射性物質は、カプセルに封入されているか注射薬となっており、これを経口投与、または静脈内注射することによって体内に取り込ませます。この治療は、甲状腺がんや多発性骨転移、褐色細胞腫などに対して行われています。体内に入った放射性物質の特徴ごとに、集中する臓器が決まっています 。
- 密封小線源治療
密封小線源治療は、密封小線源を組織に刺し入れる組織内照射と、到達可能な体腔内に挿入する腔内照射に大きく分けられます。組織内照射では、小さなカプセルやピン、管、ワイヤーなどに密封された放射性物質(コバルト60、セシウム137、イリジウム192、金198など)を、がん組織やその周囲組織に直接刺入します。

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