がんと免疫のお話し
Cancer and Immunity

分子標的薬に関する最新のニュース

(米)以下のニュースは、2020年1月時点の情報に基づきます。
・分子標的薬ゲフィチニブの新たな可能性
 分子標的薬ゲフィチニブはEGFR阻害薬の一種ですが、その標的がEGFRだけではないことが最近報告されています。
日本毒性学会での発表「分子標的薬ゲフィチニブが誘導する新たな細胞毒性亢進機構」によると、非小細胞肺がん細胞株であるA549細胞に対してあらかじめゲフィチニブを投与することにより、細胞の自然死を促す因子(デスレセプター)のFasの働きが、著しく亢進することが発見されました。さらに、ゲフィチニブが細胞の自然死を抑制する因子を不安定化させることも確認されています。Fasが誘導する細胞の自然死は不要な細胞を取り除くシステムですが、多くのがん細胞はこれを逃れてしまうので、がん治療には応用されていませんでした。現在はこの仕組みの詳細な解析が進められています。
・中枢神経系への転移がんの薬剤耐性メカニズムを解明
 金沢大学は、脳や脊髄といった中枢神経系に転移したがん細胞が増殖因子を出すことで、分子標的薬の耐性を得ているというメカニズムを明らかにしました。
同大学の研究チームは、中枢神経系への転移が多く見られるALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんのケースをモデルとして、分子標的薬アレクチニブの耐性株を作成し、そのメカニズムを分析しました。分析の結果、がんの成長に関与するマイクロRNA-449aの発現が低下し、増殖因子アンフィレグリンの発現が上昇することでEGFR(上皮成長因子受容体)を活性化させて薬剤耐性を得ていることがわかりました。
 これに加えて、この薬剤耐性はEGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるオシメルニチブを併用することで克服できることも判明しました。中枢神経系に転移したがん細胞は、ほかの臓器へ転移した場合よりも薬剤耐性を得やすいことが問題でした。この研究により、中枢神経系への転移がんの治療成績が向上することが期待されています。

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