がんと免疫のお話し
Cancer and Immunity

乳がんに関する最新のニュース

(米)以下は、2020年1月時点の情報に基づきます。
・ 遺伝による乳がんに対する予防切除
 遺伝によるがんのリスクを考慮して、まだがんになっていない乳房や卵管、卵巣を予防的に切除する手術を受ける方がいらっしゃいます。日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構では、BRCA1、BRCA2という遺伝子に変異があり、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)と診断された人を調査しました。その結果、乳がん患者の3~5%にこれらの変異が認められ、変異がある女性が生涯で乳がんを発症する可能性は40~90%と比較的高値になることがわかりました。予防切除を行うとがんを発症しにくくなり、全体的な死亡リスクも減るとされています。
・ トリプルネガティブ乳がんに対する新たな薬物療法の承認
 トリプルネガティブ乳がんが悪性度が高く予後も不良とされているのは、ホルモンレセプターやHER2タンパク質といった明確な治療の標的が存在しないためです。しかし、最近は新たな分子標的薬が承認されるなど、治療の選択肢が広がりつつあります。そのひとつがPARP阻害薬オラパリブです。この薬が標的とするPARPは、損傷したDNAの修復を助ける酵素です。この働きを阻害することで、がん細胞内でのDNA修復を抑制し、がん細胞を死滅させます。遺伝性乳がんの原因であるBRCA遺伝子に変異があり、化学療法を受けたことがある人が対象の阻害薬です。
 もうひとつは免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-L1抗体アテゾリズマブです。がん細胞が免疫細胞の攻撃から逃れるスイッチであるPD-L1を阻害する薬で、抗がん剤パクリタキセルと併用します。免疫チェックポイント阻害薬がトリプルネガティブ乳がんに承認されるのは、アテゾリズマブが初めてです。また、現在臨床試験中の新薬にAKT阻害薬イパタセルチブ、カピバセルチブがあります。AKTは細胞増殖や細胞死に密接に関与している酵素です。
 このように、トリプルネガティブ乳がんへの新たな治療法が相次いで登場したことで、乳がんにおける治療成績の向上が期待されています。

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